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最高裁判所第三小法廷 昭和26年(れ)2407号 判決 1952年3月18日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人中部水産株式会社、同富田民三、同野村治男弁護人天羽智房の上告趣意は、後に添えた書面記載のとおりである。

同上告趣意第一点について。

論旨は、刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。また記録を調べて見ると、記録一一八丁の一に検事の控訴申立書の写があるから、この写のような控訴申立書が原審に提出されたことを認めることができる。そして検事の控訴申立の通知は、控訴申立そのものの効力に関係はないのみならず、本件は、被告人から控訴申立があってその刑は第一審より著しく軽くなっているのであるから、原判決になんら違法はない。

同第二点について。

記録を調べて見ると、原審判決は、第一審判決において有罪とされた犯罪事実のうち、所論の部分を除外し、なんらの判断をせず、その余の部分についてのみ有罪とし刑を言い渡したことは所論のとおりである。しかし、原判決が第一審判決認定の有罪事実より除外した部分は、有罪とされなかったのであるから、被告人にとって利益であるばかりでなく、この部分は、原判決において無罪の判示がなかったとはいえ、一たん公訴犯罪事実として、第一審の審判をうけ、次で控訴審の審理を経て、有罪事実より除外された以上、この部分について、被告人は再び起訴されることはない訳である。従って、本件については、刑訴四一一条を適用して原判決を破棄すべきものとは認められない。論旨はとることを得ない。

よって刑訴施行法三条の二、刑訴四〇八条により全裁判官一致の意見をもって主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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